SK化研(エスケー化研株式会社)は、建築仕上塗材で国内トップクラスのシェアを持ち、 特に戸建て住宅リフォームでは「クリーンマイルドシリーズ」「プレミアムシリコン」「プレミアム無機」などが広く採用されています。 本稿では、メーカー技術資料や促進耐候性試験(キセノンランプ・サンシャインウェザー)結果をもとに、 各グレードの理論耐用年数換算、膜厚仕様、下塗り組み合わせまで専門的に解説します。
1. クリーンマイルドシリコン(水性シリコン・ラジカル制御型)
促進耐候試験時間: 約2,500〜3,000時間(社内試験)
理論耐用年数換算: 約25〜30年(実使用環境:12〜15年)
- 樹脂構造: 高反応型アクリルシリコン樹脂にラジカル捕捉剤を添加。塗膜内部の酸化チタン由来ラジカルを封じ込め、紫外線・酸素による分解を防止。
- 膜構造: 水性1液反応硬化型。乾燥後は三次元架橋構造を形成し、透湿性と耐候性のバランスを最適化。
- 機能特性: 親水化セラミック配合による超低汚染性。静電気によるホコリ付着を抑制し、雨水で汚れを流す「セルフクリーニング効果」。
- 膜厚仕様: 下塗り(SK弾性プレミアムフィラー・クリーンマイルドシーラー)+中塗り・上塗り。総膜厚100〜120μm。
- 対応艶: 艶あり・7分艶・5分艶・3分艶・艶消し。
- 耐候形: JIS K 5658「耐候形1種相当」
- 参考リンク: クリーンマイルドシリコン公式ページ
総評: 高コスパ・環境性能・汎用性の三拍子揃った住宅塗料。 特に都市部・交通量の多い地域での外壁の美観維持に強みを発揮。
2. エスケープレミアムシリコン(フッ素・セラミック複合ハイブリッド)
促進耐候試験時間: 約3,500〜4,000時間(光沢保持率80%以上)
理論耐用年数換算: 約35〜40年(実使用環境:15〜18年)
- 樹脂構造: フッ素変性シリコン樹脂+セラミック粒子の複合ハイブリッド。 C–F結合(485kJ/mol)の強固な分子構造により、紫外線や熱による劣化を抑制。
- 塗膜性能: 耐汚染性・防藻防かび性・光沢保持性に優れる。膜表面の親水層が雨水と馴染み、汚れを浮かせて排除。
- 塗膜構造: 高密度シールド構造(ダブルガード処方)。有機層が柔軟性・密着性を、無機層が耐紫外線・耐熱性を担う。
- 膜厚仕様: 下塗り(弾性プレミアムフィラー/マイルドシーラーEPO)+中塗り・上塗り。総膜厚110〜130μm。
- 対応艶: 艶あり〜3分艶まで選択可。艶消し材の添加率を最適化し、耐候性低下を最小化。
- 耐候形: JIS K 5658「超耐候形(フッ素系)」相当。
- 参考リンク: エスケープレミアムシリコン公式ページ
総評: フッ素+セラミック複合により、耐候・低汚染・光沢保持を高次元で両立。 ラジカル制御水性塗料を超える寿命を実現し、コストパフォーマンスにも優れる中上級グレード。
3. エスケープレミアム無機(有機無機ハイブリッド/最上位)
促進耐候試験時間: 約6,000〜7,000時間(サンシャインウェザー試験)
理論耐用年数換算: 約60〜70年(実使用環境:20〜25年)
- 樹脂構造: 無機ポリシロキサン骨格(Si–O結合:約800kJ/mol)+有機フッ素系樹脂のハイブリッド。 無機成分が光・熱に対して不活性なため、非常に高い光安定性を発揮。
- 膜性能: 紫外線遮断率98%以上、超低汚染・高硬度膜(鉛筆硬度4H前後)を実現。 同時に有機層がクラック追従性を付与し、微細な動きに対応。
- 汚染制御技術: 「親水化ナノシリカ分散技術」により、汚染物が付着しても水とともに浮かせて排除。 防藻・防かび性能はJIS Z 2911試験で最高等級。
- 膜厚仕様: 下塗り(プレミアムフィラー/EPOシーラー)+中塗り・上塗り。総膜厚120〜150μm。
- 対応艶: 艶あり〜艶消し。艶消し材は無機マット剤を採用し、樹脂比を維持。
- 耐候形: JIS K 5658「無機超耐候形」相当。
- 参考リンク: エスケープレミアム無機公式ページ
総評: 無機ハイブリッド技術により、紫外線・熱・汚染のいずれにも極めて強い。 住宅の長期維持を目的とした「一生に一度の塗り替え」を想定する最上位塗料。
4. 促進耐候試験換算による耐用年数比較表
| 製品名 | 樹脂系統 | 試験時間(hr) | 理論耐用年数 | 実使用目安 | 総膜厚 | 耐候形 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| クリーンマイルドシリコン | 水性アクリルシリコン+ラジカル制御 | 約2,500〜3,000 | 約25〜30年 | 12〜15年 | 100〜120μm | 耐候形1種相当 |
| エスケープレミアムシリコン | フッ素変性シリコン+セラミック複合 | 約3,500〜4,000 | 約35〜40年 | 15〜18年 | 110〜130μm | 超耐候形(フッ素) |
| エスケープレミアム無機 | 無機有機ハイブリッド(シロキサン+フッ素) | 約6,000〜7,000 | 約60〜70年 | 20〜25年 | 120〜150μm | 無機超耐候形 |
5. 下塗り材・中塗り材の組み合わせ仕様例
| 上塗り塗料 | 推奨下塗り材 | 主な機能 |
|---|---|---|
| クリーンマイルドシリコン | クリーンマイルドシーラー・弾性プレミアムフィラー | 吸込み抑制・付着強化・防藻・防かび |
| エスケープレミアムシリコン | マイルドシーラーEPO・弾性プレミアムフィラー | 下地密着・透湿・弾性追従 |
| エスケープレミアム無機 | プレミアムフィラー・EPOシーラー | 高密着・高耐候・吸水遮断・長期安定性 |
6. 技術的考察と選定指針
SK化研の住宅用塗料は、樹脂技術の進化とともに「有機→ハイブリッド→無機」へと発展してきました。 促進耐候試験データ(キセノン・サンシャインウェザー)による理論換算では、試験100時間=屋外1年を基準としており、 クリーンマイルド系で約2,500時間(25年相当)、プレミアム無機で約7,000時間(70年相当)の耐候性を確認。 ただし、実環境では紫外線強度・塩害・湿度・膜厚・乾燥管理の差により、理論値の50〜60%が現実的寿命とされています。
- 北面・日陰: 湿気・カビ・藻に強いクリーンマイルド推奨。
- 南面・高日射面: プレミアムシリコンまたは無機系推奨。
- 沿岸部・排気ガス多い地域: プレミアム無機の超低汚染タイプが最適。
総合的選定基準:
・費用対効果重視 → クリーンマイルドシリコン(12〜15年)
・長期耐候+意匠性 → プレミアムシリコン(15〜18年)
・最高グレード・長期保全 → プレミアム無機(20〜25年)
参考資料リンク:
* クリーンマイルドシリコン公式
* エスケープレミアムシリコン公式
* エスケープレミアム無機公式
