「近くで工事をしているので、今なら運搬費がかかりません。足場代を無料にしますよ」
「モニターになってくれれば、足場代の20万円を値引きします」
もし、手元の見積書に「足場代:0円(または大幅値引き)」と書かれていたら、その業者は即刻お引き取り願ってください。
断言します。
外壁塗装において、足場代が無料になることは、経済学的にも物理的にも100%あり得ません。
なぜなら、足場は業者の持ち出しではなく、専門の「足場屋さん」に外注して組んでもらうものであり、そこには確実に「15万円〜25万円の原価」が発生しているからです。
この記事では、タダという言葉に隠された「費用の付け替えトリック」と、質の悪い足場が招く「塗装失敗のリスク」について、プロの視点で徹底解説します。
1. なぜ「足場無料」は詐欺と言われるのか?(見積もりのカラクリ)
業者があなたに「足場無料」を提案できる理由は、慈善事業だからではありません。
「足場代として消した20万円を、塗料の単価にこっそり上乗せしているから」です。
以下の比較表を見てください。
これが、悪質業者がよく使う「朝三暮四(ちょうさんぼし)」のトリックです。
| 項目 | ① 優良業者の見積もり (正直な価格) |
② 足場無料の見積もり (詐欺的トリック) |
|---|---|---|
| 足場代 | 200,000円 | 0円(無料!) |
| 塗装単価 (シリコン塗料など) |
2,500円/㎡ | 4,000円/㎡ (※大幅に上乗せ) |
| 塗装工事費 (150㎡の場合) |
375,000円 | 600,000円 |
| 合計金額 | 100万円くらい | 100万円くらい (結局変わらない!) |
ご覧の通り、合計金額は変わりません。
むしろ、「無料」というインパクトで契約を急かされ、冷静な判断力を奪われる分、②の方が危険です。
さらに恐ろしいのは、「本当に足場にお金をかけない(激安の危険な足場を組む)」ケースです。
2. 安い足場は「手抜き」の温床になる
足場には種類があります。
見積もりが極端に安い業者は、職人が命がけで作業する「安全性」を軽視している証拠です。
「ビケ足場」vs「単管足場」
⭕ ビケ足場(くさび式足場)
【現在の標準】 ハンマーで打ち込んで固定する、幅の広い踏み板がある足場。
メリット: 足元が安定するため、職人が両手を使って丁寧に塗装できる。品質が安定する。
❌ 単管足場(抱き足場)
【一昔前の遺物】 鉄パイプを2本並べただけの、隙間だらけの足場。
デメリット: 常にバランスを取る必要があり、片手作業になりがち。塗りムラや落下事故のリスクが高い。
「足場なんて、作業が終われば解体するから何でもいい」
そう思うかもしれませんが、揺れる足場の上で、職人がミリ単位の精密な塗装ができるでしょうか?
良い仕事は、良い足場からしか生まれません。
3. 足場代の「適正相場」を知っておこう
騙されないためには、適正な単価を知っておくことが最強の防御です。
一般的な2階建て住宅(延床30坪)の目安は以下の通りです。
- 足場設置費用(ビケ足場): 600円〜900円 / ㎡
- 飛散防止ネット(メッシュ): 100円〜200円 / ㎡
- 総額目安: 15万円 〜 25万円
この金額が、見積書に「正直に」記載されている業者が、信頼できる業者です。
4. 【ちゃぶ台返し】「項目」を見るな。「総額」を見ろ
ここまで足場の内訳について解説しましたが、最後に最も重要なことをお伝えします。
⚠️ 見積書のマジックに騙されないでください
悪質な業者は、足場代を無料にしたり、逆に足場代を安く見せて「諸経費」で取ったりと、数字をパズルのように操作します。
見積書の1行1行をチェックしても、素人にはその妥当性は判断できません。
損をしない唯一の方法は、「足場代も塗料代もすべてひっくるめた『工事総額』」で、複数の業者を比較することです。
A社は足場無料だけど総額120万円。
B社は足場20万円だけど総額100万円。
この事実は、2社以上の見積もりを横に並べて見比べない限り、絶対に見えてきません。
その「無料キャンペーン」、本当に安いですか?
「今だけ無料」という甘い言葉の裏には、必ずカラクリがあります。
業者の営業トークに惑わされず、冷静に「総額」で判断してください。
一括見積もりサービス「ヌリカエ」なら、地元の優良業者の中から、適正価格(正直な見積もり)を提示してくれる会社を簡単に見つけられます。
「足場代無料」と言ってきた業者の見積もりが妥当かどうかの、答え合わせにも使えます。
騙されないための「適正相場」を確認する
※ 匿名OK。しつこい営業はブロックできます。
5. まとめ:足場は「安全」を買う費用です
足場代は、工事が終われば形に残らない費用です。だからこそ「無料」と言われると嬉しくなります。
しかし、その費用は職人の命を守り、塗装の品質を担保するための「必要経費」です。
安易な値引きに飛びつかず、費用の中身をしっかりと説明できる、誠実な業者を選んでください。