吹付タイルとは?リシンとの違い・費用・おすすめ塗料をプロが解説

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外壁塗装の相談で、必ずといってよいほど聞かれるのが
「うちの外壁はリシン?それとも吹き付けタイル?」
という質問です。

見た目がザラザラしているという点では似ていますが、
構造・厚み・耐久性・塗り替え仕様・必要な下地処理
すべてが大きく異なります。そしてこの “違い” を理解していないまま塗装すると、

  • 吸い込みムラでの仕上がり低下
  • 早期剥離
  • クラック(ひび割れ)の再発
  • 塗料の無駄な追加費用
  • 工事後に後悔するケース

につながりやすくなります。

この記事では、外装専門のプロの立場から
吹付タイルとリシンの違い、最適な塗料仕様、状態別のベストな選択肢
までを、やさしく丁寧に、しかし専門性は失わず深く解説していきます。

あなたの家にとって「何を選ぶのが正解なのか」が、この記事を読み終える頃にはすべて明確になります。


  1. 吹き付けタイルとリシン──まずは“本質的な違い”を理解する
    1. ● リシンとは?
    2. ● 吹付タイルとは?
    3. ● “本質的な違い” は厚み
  2. あなたの家が“どちらの下地なのか”の判別方法
    1. ● 見た目の凹凸の違い
    2. ● 触ったときの感触
    3. ● チョーキング(白い粉の出やすさ)
    4. ● 施工時期・地域性
    5. ● 古い施工の癖で判断する
  3. リシン外壁に最適な塗料仕様(メーカー仕様書に基づく)
    1. ● 微弾性フィラーが必須な理由
    2. ● 上塗りに適した塗料は?
    3. ● 艶の選び方
    4. ● 乾燥不足の注意
  4. 吹き付けタイル外壁に最適な塗料仕様(メーカー仕様準拠)
    1. ● 下塗りは弾性系 or 樹脂モルタル一体感の高いもの
    2. ● 上塗りは“厚膜に追従しやすい塗料”がベスト
    3. ● ヘッドカット仕上げの場合の注意
  5. “ひび割れ・汚れ・耐久”から見る最適解
    1. ● ひび割れが多い家
    2. ● 汚れやコケが気になる家
    3. ● 耐久性を最優先したい家
  6. 【状態別】あなたの家はどの塗装仕様が正解か
    1. ● 築20〜30年/リシン外壁/細かいひび割れあり
    2. ● 築30年以上/リシン/吸い込みが激しい
    3. ● 築20年/吹付タイル/ひび割れ少ない
    4. ● 築25〜35年/吹付タイル/クラックが複数
    5. ● 色もち・耐久を最優先したい
  7. プロがよく見る“施工トラブルの原因”と防ぐためのチェック項目
    1. ● トラブル1:下塗り不足
    2. ● トラブル2:吸い込みムラ(リシン)
    3. ● トラブル3:乾燥時間無視
    4. ● トラブル4:フィラー選定のミス
  8. まとめ:吹き付けタイル vs リシン──迷ったら“下地の正しい処理”がすべて

吹き付けタイルとリシン──まずは“本質的な違い”を理解する

吹き付けタイルとリシンは、同じ「吹付仕上げ」という分類に入りますが、
材料の性質・膜厚・凹凸の大きさ・吸い込み・割れやすさ がまったく違います。

● リシンとは?

リシンは、砂と樹脂を混ぜた “超薄膜” の吹付仕上げです。
塗膜が非常に薄く、下地のモルタルとの密着は良いのですが、

  • 吸い込みが激しい
  • クラックが表面に出やすい
  • 汚れが溜まりやすい
  • 防水性が低い

という性質があります。

昔の住宅で最も多い仕上げで、築20〜40年の家ではかなり高確率で採用されています。

「リシン外壁 吸い込み」という検索が多いのは、まさにこれが理由です。

● 吹付タイルとは?

一方の吹付タイルは、モルタル壁に “タイルガン(コンプレッサー)で厚みのある材料を吹き付けた仕上げ” です。

  • リシンより厚い
  • 立体的な凹凸模様
  • ヘッドカット(ローラーで模様を潰す仕上げ)にも対応
  • 割れにくい(ただし下地に追従するわけではない)
  • 汚れが目立ちにくい

厚膜であるため、下地の細かなクラックを隠しやすく、リシンよりも耐久性が高いという特徴があります。

● “本質的な違い” は厚み

専門的にいえば、
問題の多くは “厚み” の違いによって生まれます。

  • リシン → 0.3〜0.5mm(非常に薄い)
  • 吹付タイル → 1〜2mm(数倍の厚み)

薄いほど吸い込みは強くなり、厚いほどクラックに強くなります。

だからこそ
同じ塗料を塗るとしても、下地処理・下塗り材・塗り回数がまったく変わる
という点が最重要ポイントです。


あなたの家が“どちらの下地なのか”の判別方法

プロであれば一瞬で判断できますが、一般の方でも以下のポイントを意識すれば判断できます。

● 見た目の凹凸の違い

リシン:細かい砂を吹いたようなザラザラ。凹凸は小さい


吹付タイル:粒が大きく、立体的。よく見ると「山」が見える

特に吹付タイルは、近づいて見たときに「形状の差」が明確です。

● 触ったときの感触

  • リシン → サラッとして軽いザラザラ
  • 吹付タイル → ゴツゴツして厚みを感じる

● チョーキング(白い粉の出やすさ)

リシンは塗膜が薄いため、劣化が進むと粉が出やすくなります。

● 施工時期・地域性

関東・関西の古い分譲住宅や団地ではリシンが圧倒的に多いです。
逆に平成以降の戸建では吹付タイルの割合が増加します。

● 古い施工の癖で判断する

昭和〜平成初期の職人は、
「外壁=リシン」
という固定概念の時代があったため、築30〜40年の住宅はリシン率が非常に高いです。


リシン外壁に最適な塗料仕様(メーカー仕様書に基づく)

リシン外壁の最大の特徴は 吸い込みの激しさ
そのため、塗料メーカー(日本ペイント、関西ペイント、エスケー化研など)は
微弾性フィラーの使用を“必須”と明記しています。

● 微弾性フィラーが必須な理由

薄膜のリシンに対して、微弾性フィラーは

  • 吸い込みを止める
  • ヘアークラック(0.3mm未満)を埋める
  • 下地を平滑に整える
  • 上塗り塗料の密着を上げる

という役割を持っています。

特に吸い込みが強い家では、フィラーを多めに入れることで
仕上がりがワンランク上がる ため、プロほどフィラー塗布量を重視します。

● 上塗りに適した塗料は?

リシン外壁は「塗料の厚みが出づらい」ため、
耐久性とコスパのバランスを考えると “ラジカル系シリコン” が最も安定。

日本ペイントのパーフェクトトップは特に人気で、
「パーフェクトトップ 評判」で検索される理由は、

  • チョーキングに強い
  • 紫外線に強い
  • 色もちが良い
  • コストが抑えられる

というバランスの良さにあります。

● 艶の選び方

リシンは細かい凹凸のため「艶あり」はテカりすぎると感じる方もいます。
半艶・艶消しが選ばれることが多いです。

● 乾燥不足の注意

リシンは吸い込みが激しいため、乾燥が遅れたり、
湿度が高い日に施工すると フィラーが膨れる・剥離する ことがあります。

メーカーも
「乾燥時間を厳守すること」
を強く推奨しています。


吹き付けタイル外壁に最適な塗料仕様(メーカー仕様準拠)

吹付タイルはリシンと違い厚膜で凹凸が大きいため、
“厚みを生かす塗料仕様” が最適解 になります。

● 下塗りは弾性系 or 樹脂モルタル一体感の高いもの

厚膜の吹付タイルは、細かいクラックを隠しやすいため、
下塗りも厚みが乗るタイプが適しています。

  • 高弾性フィラー
  • シーラー+厚膜フィラー
  • サーフェイサー

リシンほど「吸い込み対策」は必要ありませんが、
凹凸の深さに対して塗布量が不足しないこと が重要です。

● 上塗りは“厚膜に追従しやすい塗料”がベスト

吹付タイルの凹凸はダイナミックで、平滑壁よりも塗膜の伸縮が求められます。

そのため、

  • ラジカルシリコン
  • ラジカルフッ素
  • 高耐候ウレタン(一部)

など、弾性との相性が良い塗料が選ばれます。

● ヘッドカット仕上げの場合の注意

ヘッドカットは、吹付タイルをローラーで潰してフラットに近づける仕上げです。
この場合、凹凸が減るため、

  • マット仕上げ(半艶・3分艶)が美しく出る
  • 厚膜感は控えめになる

という特徴があります。


“ひび割れ・汚れ・耐久”から見る最適解

塗料を選ぶ際、
「外壁の材質」×「状態」
の掛け合わせで正解が変わります。

● ひび割れが多い家

  • リシン → 微弾性フィラーを厚く
  • 吹付タイル → 弾性下塗り+弾性上塗りが最適

リシンに硬い塗料だけを塗ると、ひび割れが再発します。

● 汚れやコケが気になる家

リシンは表面の目が細かいので汚れが溜まりやすく、
撥水性の高い塗料(ラジカル系)が適しています。

吹付タイルは凹凸に汚れが残りやすいため、
「低汚染タイプ」の上塗りが効果を発揮します。

● 耐久性を最優先したい家

どちらも フッ素系・無機系 が最強ですが、
吹付タイルは塗布量が増えるため、やや費用は上がります。


【状態別】あなたの家はどの塗装仕様が正解か

ここからは、実際の現場で最も需要が高い
「状態別の最適仕様」 を明確に提示します。

● 築20〜30年/リシン外壁/細かいひび割れあり

→ 微弾性フィラー厚塗り+ラジカルシリコン
(最もコスパよく仕上がりが安定)

● 築30年以上/リシン/吸い込みが激しい

→ フィラーを2回、またはフィラー+サーフ
上塗りはパーフェクトトップ級がベスト

● 築20年/吹付タイル/ひび割れ少ない

→ シーラー+厚膜フィラー+ラジカルシリコン

● 築25〜35年/吹付タイル/クラックが複数

→ 弾性系下塗り+弾性上塗りで追従性を確保

● 色もち・耐久を最優先したい

→ 無機 or フッ素
吹付タイルでは塗布量が増える(=耐久もさらに上がる)


プロがよく見る“施工トラブルの原因”と防ぐためのチェック項目

吹付タイル・リシンはどちらも古い住宅に多く、
施工トラブルが起きやすい外壁 でもあります。

● トラブル1:下塗り不足

リシンは吸い込み、吹付タイルは凹凸が深いため、
「下塗りの量」だけで仕上がり品質が大きく変わります。

● トラブル2:吸い込みムラ(リシン)

特にリシンでは、
フィラーの塗布量不足 → 仕上がりが白ボケ
という失敗が多発します。

● トラブル3:乾燥時間無視

フィラーは厚塗りするほど乾燥に時間が必要。
急ぐ業者ほどトラブルを起こします。

● トラブル4:フィラー選定のミス

  • リシンに硬いシーラーだけ → 早期剥離
  • 吹付タイルに柔らかすぎる弾性 → 割れを拾う

など、材質に合わせた選定が必須です。


まとめ:吹き付けタイル vs リシン──迷ったら“下地の正しい処理”がすべて

外壁塗装の仕上がりと耐久性を決めるのは、
「どの塗料を塗るか」よりも「どんな下地処理をしたか」 です。

リシンは薄く吸い込みやすい。
吹付タイルは厚く凹凸が深い。

それぞれの性質を理解し、メーカー仕様書通りに

  • 下塗り量
  • 乾燥時間
  • 材料選定
    を守ることで、初めて本来の耐久性が発揮されます。

もし、

  • 自分の家がどちらかわからない
  • クラックが多く最適仕様が判断できない
  • 業者によって言うことが違う
  • 見積書の内容が適正か不安

という場合は、専門家にも必ず確認してください。

最近では、外壁の種類と状態を写真だけで判定し、
複数社から最適仕様の見積もりを出してもらえる
「ヌリカエ」などの無料サービス もあります。

無理に一社だけで決めず、比較することで
“本当に家に合った塗装仕様” が見つかります。

あなたの家がこれからも長く、美しく、安全に保たれるよう、
この記事の知識をぜひ役立ててください。

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