アステックペイントは、遮熱・低汚染・超耐候技術を強みとする国内塗料メーカーの一つであり、 特に「超低汚染リファイン」「スーパーラジカルシリコン」「無機ハイブリッド」シリーズは、 促進耐候性試験(SWOM/キセノンウェザー)によってその耐久性が検証されています。 ここでは、これらの試験データとメーカー技術資料をもとに、各塗料の理論耐用年数・構造・施工上の注意点を専門的に解説します。
1. 促進耐候性試験データと理論耐用年数
塗料の「耐候年数」は、屋外暴露試験または促進耐候性試験によって推定されます。 アステックペイントでは、サンシャインウェザーオメーター(SWOM)およびキセノンランプ試験を採用。 一般的な換算値は以下の通りです:
| 試験時間(SWOM) | 屋外暴露換算 | 想定耐用年数目安 |
|---|---|---|
| 2,000時間 | 約5〜6年相当 | ミドルグレード(シリコン) |
| 4,000〜5,000時間 | 約10〜12年相当 | ハイグレード(遮熱・ラジカル) |
| 8,000時間以上 | 約18〜20年相当 | プレミアム/無機ハイブリッド |
これらは日本塗料工業会の基準換算式(暴露1年 ≒ SWOM400h換算)に基づいており、 紫外線・熱・水分を繰り返し与える試験で塗膜光沢保持率80%を維持できた時間を基準とします。 アステックの上位塗料では8,000時間以上の光沢保持が確認されており、 実使用環境で20年耐候クラスと評価されます。
2. グレード別製品詳細と膜構造
(1)スーパーラジカルシリコン GH【ミドルグレード】
- 樹脂系統: ラジカル制御シリコン樹脂
- 耐候試験: SWOM 4,000h → 約10〜12年相当
- 標準膜厚: 上塗り総膜厚 約60〜70μm
- 下塗り推奨: エポパワーシーラー(水性エポキシ)
- 特長:
- 活性酸素(ラジカル)発生を制御する捕捉剤を配合。
- 塗膜の黄変・艶引けを抑制。
- 水性1液タイプで住宅密集地にも最適。
(2)超低汚染リファインシリーズ【ハイ〜プレミアムグレード】
- 樹脂系統: フッ素変性シリコン樹脂+セラミック粒子複合
- 耐候試験: SWOM 6,000〜8,000h → 約15〜20年相当
- 標準膜厚: 上塗り総膜厚 約70〜80μm
- 下塗り推奨: ホワイトフィラーA・エポプレミアムシーラーなど
- 特長:
- 親水性セラミック被膜により汚染物質を雨水で分解除去。
- 遮熱顔料(酸化チタン+特殊黒色顔料)による熱反射率向上。
- 一般的なフッ素樹脂よりも塗膜柔軟性が高く、クラック追従性に優れる。
(3)無機ハイブリッドシリーズ【最上位グレード】
- 樹脂系統: 無機シロキサン+有機アクリルハイブリッド
- 耐候試験: キセノン8,000〜10,000h → 約20〜25年相当
- 標準膜厚: 上塗り総膜厚 約80〜90μm
- 下塗り推奨: エポプレミアムシーラー、RSプライマー無機対応品
- 特長:
- Si–O結合(シロキサン)による極めて高い化学安定性。
- ラジカル制御・遮熱・防藻防カビ・超低汚染の複合構造。
- 長期にわたる艶保持率90%以上(メーカー試験結果)。
3. 施工条件・注意点(メーカー技術資料準拠)
- 施工環境条件: 気温5℃以上、湿度85%以下、結露・降雨・霜の恐れがないこと。
- 下地処理: 高圧洗浄後は十分な乾燥期間を確保(23℃で48〜72時間、冬期は96時間目安)。
- 塗布量: 上塗り合計0.25〜0.35 kg/㎡(2回塗り)を遵守。
- 塗り重ね間隔: 2〜6時間以上(23℃時)。低温下では8時間以上確保。
- 希釈率: 清水5〜10%以内(過希釈は艶ムラ・塗膜強度低下の原因)。
- 注意: 遮熱顔料仕様は色相によって反射率差があり、濃色ほど温度上昇リスクが高いため配慮が必要。
4. 下塗り材の選定と密着性確保
外壁塗装における「下塗り」は、吸い込み調整・密着性向上・下地補強の役割を持ちます。 アステックペイントでは、上塗りシリーズごとに専用プライマーが設定されています。
| 上塗りシリーズ | 推奨下塗り | 備考 |
|---|---|---|
| スーパーラジカルシリコン GH | エポパワーシーラー | 吸込み止め・密着強化型 |
| 超低汚染リファインSi/F | エポプレミアムシーラー/ホワイトフィラーA | 高密着・下地色調整可 |
| 無機ハイブリッドシリーズ | RSプライマー無機対応品 | シロキサン骨格対応タイプ |
特にモルタル下地では吸水率が高く、乾燥不足や吸込みムラが残ると上塗り塗膜のピンホール・膨れ・白化の原因となります。 下塗り塗布後は表面乾燥だけでなく、内部までの乾燥を確認した上で上塗りを施工する必要があります。
5. 総括:耐候性とコストパフォーマンスの最適バランス
アステックペイントの製品群は、実験データ上では日本ペイント・関西ペイント・SK化研と同等以上の耐候性を示しています。 「超低汚染リファイン」シリーズの8,000h耐候性は、実環境換算で約20年クラスの塗膜保持性能に相当します。 ただし、耐用年数はあくまで適正施工が前提であり、下地乾燥・膜厚管理・希釈率遵守が守られないと性能が著しく低下します。
建物の立地条件・予算・将来のメンテナンス計画に応じて、 ラジカル制御(コスト重視)→リファイン遮熱(機能重視)→無機ハイブリッド(長期保全重視) の順に選定するのが合理的です。
