関西ペイントは日本国内で最も幅広い住宅用塗料ラインナップを持ち、特にアレスダイナミックシリーズやプライムProシリーズなどが住宅リフォーム業界で高く評価されています。 本稿では、関西ペイントの主力外壁用塗料を促進耐候性試験(キセノンランプ・サンシャインウェザー等)の理論換算に基づき比較し、各グレードの膜構造・樹脂設計・下塗り仕様まで専門的に解説します。
1. アレスダイナミックTOP(水性ラジカル制御シリコン)
促進耐候試験時間: 約3,000時間(社内試験・光沢保持率80%以上)
理論耐用年数換算: 約30年(実使用環境で12〜15年目安)
- 樹脂構造: HALS(光安定剤)高濃度配合のハルスハイリッチシリコン樹脂を使用。塗膜内部のラジカル発生を封じ込め、紫外線・熱・酸化による分子鎖切断を防止。
- 膜構造: 水性反応硬化型2層構造(架橋型アクリルシリコン)。乾燥後は高密度の架橋膜を形成し、酸素・水分の透過を抑制。
- 塗膜性能: 耐候性、密着性、耐チョーキング性、防藻・防かび性、透湿性を両立。
- 膜厚仕様: 下塗り(アレスダイナミックフィラー)+中塗り・上塗り2回。総膜厚:100〜120μm。
- 施工条件: 気温5℃以上・湿度85%未満。低温時は乾燥時間を2倍確保。希釈は清水5〜10%。
- 耐候形: JIS K 5658「耐候形1種相当」
- 参考リンク: 公式製品ページ / 技術資料PDF
総評: 水性塗料でありながら溶剤型に匹敵する耐候性を持ち、低臭・環境性能も高い。戸建て住宅のベース仕様として最も採用が多い。
2. RS ゴールドFⅡ(弱溶剤2液フッ素ハイブリッド)
促進耐候試験時間: 約3,500〜4,000時間(キセノンランプ試験・光沢保持率80%)
理論耐用年数換算: 約35〜40年(実使用環境で15〜18年)
- 樹脂構造: 高純度フッ素樹脂(C–F結合:485kJ/mol)+セラミック微粒子分散構造。紫外線・酸素・熱分解に極めて強く、チョーキング・褪色を大幅に抑制。
- 膜特性: 硬質で平滑な塗膜表面により、汚染物の静電吸着を抑制。低汚染性・高光沢保持性に優れる。
- 塗膜構造: 弱溶剤2液反応硬化型。主剤(フッ素樹脂)と硬化剤(イソシアネート)が化学反応し、強固な3次元架橋構造を形成。
- 膜厚仕様: 下塗り(RSシーラー or 弾性フィラー)+中塗り・上塗り。総膜厚:110〜130μm。
- 対応艶: 艶あり・7分艶・5分艶・3分艶・艶消し。
- 施工上の注意: 2液混合後の可使時間は5時間(23℃)。混合後は撹拌を十分に行い、硬化不良を防止。
- 耐候形: JIS K 5658「超耐候形(フッ素)」相当。
- 参考リンク: 製品情報ページ
総評: 紫外線・塩害・排気ガス・酸性雨に対して極めて安定した塗膜を維持。意匠性・艶保持性にも優れ、都市部や沿岸部の高耐候仕様住宅に最適。
3. プライムPro 無機/無機MIX(有機無機ハイブリッド)
促進耐候試験時間: 約5,000〜7,000時間(サンシャインウェザー試験・光沢保持率80%以上)
理論耐用年数換算: 約50〜70年(実使用環境で20〜25年)
- 樹脂構造: 無機ポリシロキサン(Si–O結合:800kJ/mol)+有機フッ素共重合体を組み合わせたハイブリッド構造。 紫外線分解エネルギー(380kJ/mol)を大きく上回る結合エネルギーを持ち、非常に高い光安定性を実現。
- 膜特性: 無機骨格により硬度・耐擦傷性が高く、同時に有機樹脂の柔軟性を保持してクラック追従性も確保。
- 低汚染機能: 表面親水化処理により汚染物を雨水で自浄。防藻・防かび性能はJIS Z 2911準拠で最高等級。
- 膜厚仕様: 下塗り(プライムシーラー/RSフィラー)+中塗り・上塗り。総膜厚:120〜150μm。
- 対応艶: 艶あり・5分艶・3分艶・艶消し(マット)対応。艶消しでも樹脂量を保持する調整処方。
- 耐候形: JIS K 5658「無機系超耐候形」相当。
- 参考リンク: プライムProシリーズ製品紹介ページ
総評: 関西ペイントの最上位グレード。 無機骨格による耐紫外線性・高硬度性・超低汚染性により、長期にわたって光沢・色彩を保持する。 20年以上の長期塗膜保証制度を提供する施工店も存在する。
4. 促進耐候試験換算による耐用年数比較表
| 製品名 | 樹脂系統 | 試験時間(hr) | 理論耐用年数 | 実使用目安 | 総膜厚 | 耐候形 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| アレスダイナミックTOP | 水性ラジカル制御アクリルシリコン | 約3,000 | 約30年 | 12〜15年 | 100〜120μm | 耐候形1種相当 |
| RS ゴールドFⅡ | フッ素+セラミック(弱溶剤2液) | 約3,500〜4,000 | 約35〜40年 | 15〜18年 | 110〜130μm | 超耐候形(フッ素) |
| プライムPro 無機/無機MIX | 無機ハイブリッド(水性2液) | 約5,000〜7,000 | 約50〜70年 | 20〜25年 | 120〜150μm | 無機超耐候形 |
5. 下塗り材・中塗り材の組み合わせ仕様例
| 上塗り塗料 | 下塗り材 | 主な機能 |
|---|---|---|
| アレスダイナミックTOP | アレスダイナミックフィラー/アレスダイナミックシーラー | 吸込み抑制・付着強化・微弾性・防藻 |
| RS ゴールドFⅡ | RSシーラー/RS弾性フィラー | 高密着・旧塗膜適性・微弾性下地調整 |
| プライムPro 無機 | プライムシーラー/RSフィラー | 高密着・遮水・透湿・下地調整・高耐候 |
6. 技術的考察・選定指針
促進耐候性試験は、JIS K 5600-7-7(キセノンランプ法)またはASTM G155(サンシャインウェザー)を基準とし、 紫外線・湿度・温度サイクルを人工的に再現して塗膜の劣化を促進させる試験です。 一般的に100時間=屋外1年と換算され、試験時間3,000〜7,000時間の結果から理論的な耐用年数を導き出すことが可能です。 ただし、実環境では次の要因により劣化が加速します:
- 南面・西面など強日射面
- 海岸・塩害地域・高湿度環境
- 施工時の乾燥不足・膜厚不足・希釈過多
したがって、実際の耐用年数は理論値の50〜60%程度が目安となります。 関西ペイントの住宅用塗料では、下塗り・膜厚・乾燥時間・艶調整が仕様通り行われた場合、メーカー公表値に近い寿命を十分に発揮します。
おすすめ選定基準:
・コスト・施工性重視 → アレスダイナミックTOP(12〜15年)
・意匠性・高光沢重視 → RS ゴールドFⅡ(15〜18年)
・長期保全・高耐候仕様 → プライムPro 無機(20年以上)
参考資料リンク:
* アレスダイナミックTOP 製品ページ
* アレスダイナミックシリーズ 技術資料PDF
* 関西ペイント リフォームサポート公式ページ
