外壁塗装の「艶あり」と「艶消し」はどちらが長持ちする?メーカー試験データと現場の実態から徹底解説

外壁塗装では「艶あり」か「艶消し(マット)」を選べますが、 実はこの違いは塗料中の樹脂量艶消し剤の配合に関係しており、 見た目だけでなく耐候性や汚れの付きやすさにも影響します。 さらに、施工条件によっては艶ムラ(光沢の不均一)が発生することもあります。 この記事では、メーカー公式データと実際の施工現場の知見をもとに詳しく解説します。

1. 艶は「樹脂量」と「光の反射」で決まる

艶の有無は、塗膜表面の平滑性と光の反射率によって決まります。 塗料の主成分である合成樹脂(シリコン・フッ素など)が多いほど表面がなめらかになり、 光が均一に反射して強い艶が出ます。 一方、艶消し塗料は「艶消し材(シリカ・アルミナなどの微粒子)」を混ぜて、 光を乱反射させてマットな質感に仕上げています。

ただしこの艶消し材が増える分、一斗缶あたりの樹脂量が減少します。 つまり同じグレードの塗料でも、艶あり > 7分艶 > 5分艶 > 3分艶 > 艶消しの順に 紫外線や雨水への耐候性が低くなります。

2. メーカー試験データから見る耐候性の差

  • 日本ペイント:「パーフェクトトップ」試験結果では、 艶ありの光沢保持率が80%以上(10年相当)、艶消しは約60%日本ペイント公式技術資料(PDF)
  • 関西ペイント:「アレスダイナミックTOP」促進耐候試験では、 艶ありが約4000時間経過後もΔE(色差)が小さく、艶消しは早期に低下傾向。 関西ペイント公式仕様書
  • エスケー化研:「プレミアムシリコン」試験では、 艶ありタイプが紫外線照射試験後もツヤ・色とも安定、 艶消しは表面白化(チョーキング)傾向あり。 エスケー化研 製品ページ

どのメーカーも共通して「艶ありの方が光沢・耐候性ともに安定」という結果を示しています。

3. 汚れ・メンテナンス性の違い

タイプ特徴汚れの付きやすさ清掃性
艶あり表面が滑らかで光沢感が強い◎ 雨で汚れが流れ落ちやすい◎ 掃除で落ちやすく、再塗装時も下地が安定
艶消しマットで落ち着いた質感△ 凹凸に汚れが入りやすく黒ずみや雨筋が出やすい△ コケ・藻の付着が残りやすい

艶消し塗膜は微細な凹凸構造を持つため、空気中のホコリや排ガス、花粉などが引っかかりやすく、 長期的には汚れが蓄積します。 艶ありは表面がツルツルしており、汚れが滑り落ちやすく、清掃性にも優れています。

4. 施工中に発生する艶ムラと足場繋ぎ跡のリスク

艶ムラは、塗布量・乾燥速度・撹拌不足などの施工要因で発生しますが、 実は足場繋ぎ(控え金具)を外した部分の補修跡も大きな原因の一つです。

足場を解体した後、控え金具の取付部をパテ処理して部分塗装を行いますが、 その部分は周囲と乾燥条件や下地吸い込み率が異なるため、 同じ塗料を塗っても光沢や艶の出方が微妙に違うのです。 とくに艶あり塗料では光の反射が均一なため、 わずかな艶差でも見る角度によってムラが強調されやすい傾向があります。

このような艶ムラを防ぐためには、補修部分の範囲をやや広めにぼかして塗装する「ぼかし塗り」や、 最終的に全面を軽く吹き付けて艶を均一化する「仕上げ吹き」が効果的です。 メーカーの施工基準書でも、日本ペイント仕様書関西ペイント施工要領において 「補修部は艶差が生じるため全体的な馴染ませ塗りが望ましい」と明記されています。

5. 専門家や職人が実際に選ぶ艶レベル

塗料の特性を理解しているプロ(メーカー技術担当・職人・営業)は、 耐候性・汚れ・経年変化を考慮して「艶あり〜7分艶」を選ぶケースが圧倒的に多いです。

  • 樹脂量が多く、紫外線・雨・汚染に強い。
  • ツヤが時間とともに自然に落ち着き、3〜5年で“半艶”程度になる。
  • メンテナンス時の下地密着性が高く、再塗装も安定。

一方、艶消し塗料は美観重視の意匠的な選択で使われますが、 経年による艶引けや汚れ付着を前提に、清掃や短期メンテナンスを覚悟する必要があります。

6. まとめ:艶はデザイン性と耐久性のトレードオフ

艶あり塗料は樹脂が多く、紫外線・雨・汚れに強く、長持ちします。 艶消し塗料は落ち着いた質感でデザイン性に優れますが、 艶を抑える分だけ樹脂量が減り、耐候性・清掃性は劣ります。 また、足場撤去後の補修や乾燥条件によって艶ムラが出やすいため、 施工精度と仕上げ方法が非常に重要です。

  • 🌞 耐候性・メンテナンス重視 → 艶あり・7分艶
  • 🏡 落ち着いたデザイン重視 → 5分艶〜艶消し(要清掃・注意)
  • 🔧 施工後の艶ムラを防ぐには → 撹拌・希釈・乾燥・足場控え補修を適正管理

艶は単なる見た目の好みではなく、塗膜の寿命と仕上がりの均一性を左右する要素です。 最終的には「建物の用途・立地・メンテナンス頻度」に応じて最適な艶レベルを選ぶことが重要です。

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